投稿日:2025.4.9
高齢者の矯正治療
「もう年だから矯正は無理かな…」
そう思って諦めていませんか?
歯列矯正は、若い世代だけのものではありません。
近年では、健康寿命への意識の高まりや、矯正技術の進歩により、シニア世代で矯正治療を始める方が増えています。
いくつになっても、美しい歯並びと健康な噛み合わせを手に入れることは可能です。
この記事では、高齢者の矯正治療に焦点を当て、治療のメリット・デメリットから矯正方法まで解説します。
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高齢者でも歯列矯正は可能です
「もう年だから歯列矯正は無理だろう…」そんな風に考えていらっしゃるシニア世代の方も少なくないかもしれません。
しかし、結論から申し上げますと、高齢者の方でも矯正治療を受けることは十分に可能です。
歯を動かす基本的なメカニズムに年齢の上限はなく、歯とそれを支える歯周組織(歯ぐきや骨など)が健康であれば、
何歳からでも治療をスタートできるのです。
もちろん、若い世代と比較していくつかの注意点はあります。
例えば、加齢に伴う骨代謝の変化により、歯の移動に少し時間がかかるかもしれません。
また、長年抱えていた歯周病や糖尿病、骨粗しょう症といった全身的な健康状態によっては、治療計画に特別な配慮が必要となるケースも考えられます。
とはいえ、近年の矯正治療技術の進歩は目覚ましく、目立ちにくい装置や痛みを軽減する工夫も数多く登場しています。
これにより、高齢者の方々にとっても矯正治療のハードルは以前よりも格段に下がってきていると言えるでしょう。
大切なのは、年齢という数字だけで判断するのではなく、ご自身の歯や口内、そして全身の健康状態を正確に把握することです。
歯科医師の診断のもと、一人ひとりの状態に合わせた治療計画を立てれば、高齢者の方でも矯正治療によって多くのメリットを得られる可能性は十分にあります。
歯並びや噛み合わせにお悩みであれば、まずは一度、矯正歯科医に相談してみることをおすすめします。
シニア世代が歯列矯正を受ける7つのメリット
ここでは、シニア世代が矯正治療を受ける主な7つのメリットをご紹介します。
①しっかり噛めて食事が美味しくなる
歯並びが整うと、食べ物を効率よく噛み砕けるようになります。
これまで食べにくかった硬いものや繊維質の多い野菜なども楽しめるようになるかもしれません。
しっかりと咀嚼できることは食べ物の消化吸収を助け、胃腸への負担を軽減することにも繋がります。
栄養バランスの取れた食事は、全身の健康維持の基本です。
噛み合わせが改善されることで食事がより一層楽しく、豊かなものになるでしょう。
美味しい食事は、心を満たす大切な時間をもたらしてくれます。
②歯磨きが楽になり、虫歯・歯周病リスクが低下
歯が重なり合っていたり、傾いていたりすると歯ブラシが届きにくい箇所ができ、磨き残しが多くなりがちです。
これが、虫歯や歯周病の大きな原因となります。歯並びが整うと、歯磨きなどのセルフケアが格段にしやすくなります。
隅々まで清潔に保ちやすくなるため、虫歯や歯周病の予防に効果的です。
歯周病は全身疾患との関連も指摘されており、お口の健康を守ることは全身の健康維持にも繋がります。
③口臭の予防・改善につながる
歯並びの乱れは食べかすが残りやすく、細菌が繁殖しやすい環境を作り出します。
これが口臭の原因となる揮発性硫黄化合物を発生させてしまうのです。
歯並びが整うと歯磨きがしやすくなり、プラーク(歯垢)コントロールが向上します。
結果として、お口の中を清潔に保ちやすくなり、細菌の繁殖が抑えられ、気になる口臭の予防や改善につながることが期待できます。
④滑舌が良くなり、会話がスムーズに
歯並びは言葉を発する際の舌の動きや空気の流れにも影響を与えます。
特に前歯の隙間や傾きは、サ行やタ行などの発音に影響しやすいと言われています。
歯並びが整うと、舌の動きがスムーズになり、空気が漏れることも少なくなるため、発音が明瞭になることが期待できます。
⑤認知症リスクの低減効果に期待
近年、「噛む」という行為が脳機能と密接に関連していることが注目されています。
噛むことは脳への血流を促進し、刺激を与えます。
噛み合わせを改善し、しっかりと咀嚼できる状態を維持することは脳の活性化を助け、認知機能の維持に貢献する可能性が。
また、口腔衛生状態の改善が歯周病菌と関連するとされる認知症リスクを間接的に低減する可能性も考えられます。
ただし、これはあくまで可能性であり、直接的な予防効果が確立されているわけではありません。
⑥バランス感覚向上による転倒リスク軽減も?
噛み合わせの位置は、頭の位置や首、肩周りの筋肉の緊張度に影響を与え、全身のバランスに関わることがあります。
不安定な噛み合わせは、体の重心を不安定にし、ふらつきの原因となる可能性も指摘されています。
噛み合わせが適切な位置に整うと、顎周りの筋肉の緊張が和らぎ、体幹の安定につながることでバランス感覚が向上し、
転倒リスクの軽減につながるかもしれません。
⑦見た目の改善で自信を取り戻し、笑顔が増える
歯並びが整うことで口元の見た目が美しくなり、清潔感や若々しい印象を与えることがあります。
長年気にしていた歯並びのコンプレックスが解消されると、自然と笑顔が増え、気持ちも前向きになる方が多くいらっしゃいます。
知っておきたい高齢者の歯列矯正のデメリットと注意点
高齢者の矯正治療には多くのメリットがある一方で、若い世代とは異なる注意点や起こりうるデメリットも存在します。
治療を検討する際には、これらの点を十分に理解しておくことが重要です。
①若い頃より歯の移動に時間がかかる可能性がある
一般的に、高齢者は若い人に比べて骨の代謝(リモデリング)が緩やかになる傾向があります。
結果として歯の移動速度が遅くなり、矯正治療にかかる期間が長くなる可能性があります。
②治療中の口腔ケアがより重要になる
高齢者は、唾液分泌量の減少やもともと歯周病にかかっているケースなどにより、虫歯や歯周病のリスクが比較的高い状態にあること
が多いです。矯正装置を装着すると、歯磨きがしにくくなり、さらにリスクが高まります。
③ブラックトライアングルができやすい場合も
高齢者の矯正治療では、歯と歯茎の間に「ブラックトライアングル」と呼ばれる三角形の隙間ができやすい傾向があります。
④持病や服用薬によっては治療の制約・注意が必要
糖尿病、高血圧、骨粗しょう症などの持病や服用している薬(特に骨粗しょう症治療薬の一部であるビスフォスフォネート系薬剤や、
血液をサラサラにする薬など)は、歯の移動や治療計画に影響を与える可能性があります。
⑤装置の種類によっては管理に慣れが必要
矯正装置には、自分で取り外しできるマウスピース型や歯に固定するワイヤー型などがあります。
どちらのタイプも、適切な装着時間の管理や日々の清掃といった自己管理が求められます。
特に高齢者の場合、視力の低下や手指の動きなどから、装置の着脱や細かい部分の清掃に慣れが必要です。
管理を怠ると治療効果が得られなかったり、虫歯・歯周病のリスクを高めたりするため、
歯科医院での指導をしっかり受け、必要であればご家族のサポートも検討しましょう。
高齢者におすすめの矯正方法
高齢者の方々が矯正治療を検討される際、どのような治療法が適しているのでしょうか?
ここでは、代表的な選択肢とその特徴をご紹介します。
【選択肢1】マウスピース矯正(インビザライン等)
透明なマウスピースを段階的に交換していくことで歯を動かす方法です。
メリット
● 目立ちにくい(透明なため、審美性が高い)
● 取り外し可能(食事や歯磨きがしやすい、口腔衛生を保ちやすい)
● 食事制限が少ない
● 痛みや違和感が比較的少ない
注意点
● 1日20時間以上の装着が必要(自己管理が重要)
● 適応できる症例に限りがある場合がある
● 紛失・破損のリスク
目立ちにくさや清掃のしやすさが大きな利点です。
【選択肢2】ワイヤー矯正(表側・裏側)
歯の表面(表側)または裏側(舌側)にブラケットという装置を付け、ワイヤーを通して歯を動かす最も一般的な方法です。
メリット
● 幅広い症例に対応可能(複雑な歯並びにも有効)
● 歯を動かす力が確実
● 自己管理の負担が少ない(装置は固定式)
注意点
● 表側は装置が目立ちやすい(裏側は目立たないが費用が高く、違和感が出やすい場合も)
● 歯磨きがしにくい(虫歯・歯周病リスクに注意が必要)
● 調整後に痛みや違和感が出やすい
● 硬いものや粘着性のある食べ物は避ける必要がある
近年は白いワイヤーや透明なブラケットなど、目立ちにくい工夫もされています。
高齢者の場合、口腔ケアのしやすさも考慮して選択することが重要です。
まとめ
高齢者の方でも矯正治療が可能であり、多くのメリットが期待できることをご理解いただけたかと思います。
歯並びが改善すると見た目の改善はもちろん、しっかり噛めるようになることで食事の楽しみを取り戻し、
消化吸収を助けます。また、歯磨きがしやすくなることで虫歯や歯周病のリスクを減らし、お口と全身の健康にもつながるでしょう。
当院では随時矯正相談を実施しています。年齢を理由に諦める前にまずはお気軽にご相談ください。
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