投稿日:2025.6.2
受け口のリスクは「つばを飲み込むとき」にも起こる?
みなさんこんにちは、札幌キュア矯正歯科です。
「受け口(反対咬合)」と聞くと、まず思い浮かぶのは見た目の印象かもしれません。しかし、受け口の影響は見た目だけではなく、日常的に行っている「つば(唾液)を飲み込む」動作にも悪影響が出ることがあります。そこで今回は、受け口によってどのような飲み込みのトラブルが起こりうるのか、そしてその影響が将来にどうつながっていくのかを、詳しく解説します。
目次
「つばを飲み込む」時はどうなっているの?
無意識の何度も行われているつばを飲み込む動作ですが、飲み込む(嚥下)動作には、以下のような一連の流れがあります。
- 舌で唾液を喉の奥に送る
- 軟口蓋(口の奥の天井部分)が上がり、鼻に流れないようにする
- 喉の筋肉が動き、唾液を食道へ送る
- 同時に気管が閉じられ、誤嚥(誤って気管に入ること)を防ぐ
この中で特に重要なのが舌の動きです。
舌が上顎にしっかりと接触して正しい位置で動くことが、スムーズな嚥下のために大切なポイントです。
受け口が飲み込みに与える4つの悪影響
1 舌のポジションが不安定になる
受け口は、上下の噛み合わせのバランスが反対になるため、舌を上顎に押し付ける動作がしづらい傾向にあります。下顎が前に出ていると、舌の位置が下寄りになりやすく、舌のポジションが不安定になります。そうすると、舌本来の機能が十分に発揮しにくく、飲み込みにも影響があります。
2 飲み込み方に変な癖がついてしまう
本来、つばを飲むときは舌が上顎に向かって動きますが、舌の位置がずれていると、前方や下方に向けて動かす癖(異常嚥下癖)がつくことがあります。これにより舌が前歯を押してしまい、さらに歯並びが悪化する悪循環になることも考えられます。
3 飲み込み時に余計な力が必要になる
飲み込む時に変な癖がついていると、無意識のうちに顔や首の筋肉を使って無理な力がかかって飲み込もうとします。その結果、口周りや顎まわりの筋肉バランスが変わってしまい、顔つきや発音にも影響が出ることもあります。
4 舌癖が発音や口呼吸を引き起こす可能性がある
飲み込みにくさから舌が正しい位置におさまらないと、「舌癖(ぜつへき)」と呼ばれる習慣が定着します。舌の正しいポジションではなくなってしまうため、サ行・タ行の発音が不明瞭になったり、常に口が開いてしまったりすることで口呼吸になるなど、様々な影響が出る可能性があります。
お子さまの成長期に受け口が与える影響とは?
お子さまの時期は、骨格や筋肉、歯並びがまだ発達途中にあります。とくに小学校低学年〜思春期にかけての「成長期」は、乳歯から永久歯の生え代わりもあり、お口まわりの機能や構造が大きく変化する重要な時期です。この時期に受け口(反対咬合)や舌のクセ、誤った飲み込み方があると、それが成長に大きな影響を与えてしまうことがあります。
- 歯並びや発音にも影響が出やすい
- 前歯が押されて出っ歯(上顎前突)になってしまう
- 歯列がガタガタになる
- 上下の前歯が噛み合わない「開咬(かいこう)」になる
このような歯並びの異常を引き起こすことがあります。さらに、舌の動きが不安定なままだと「サ行」「タ行」などの発音がしにくくなり、滑舌や発音の悪さの原因になる可能性があります。これらは日常生活や学校生活の中で、お子さんの自信やコミュニケーション力にも影響を与えることがあるため、注意が必要です。
- 骨格の成長に影響を及ぼすことがある
受け口傾向のお子さんは、上下のあごのバランスが崩れていることが多く、本来は上あごが前方に、下あごがやや後方に発育するのが理想ですが、舌の位置や機能に異常があると、下あごがさらに前方へ成長してしまうリスクがあります。とくに、舌が前方または下方に位置していると、飲み込むたびに舌が下顎の成長方向を「押し広げる」ように働いてしまい、下顎が出やすい動きをします。このような発育のズレが進行してしまうと、大人になってからの矯正治療や外科手術が必要になることもあるため、小児期での早期対応がとても重要です。
受け口による飲み込みの問題への対処法とは?
受け口が原因で「舌がうまく動かない」といった症状がある場合、見た目だけでなく、機能的な問題を解消するための対策が必要です。
ここでは、このような状態に有効な3つのアプローチをご紹介します。
1 舌や飲み込みのトレーニング(MFT:口腔筋機能療法)
MFTは、口まわりや舌の筋肉を正しく使えるようにするための訓練法です。受け口の方は、舌が正しい位置に置けなかったり、飲み込みの際に前歯を押してしまったりする癖があることが多いため、MFTが効果的です。
具体的なトレーニング内容
- 正しい飲み込み方を身につける反復練習
- 唇を閉じたまま鼻呼吸する練習
- 舌を上顎につける練習(スポットポジションの練習)
- 頬や唇の筋力を高めるエクササイズ など
特にお子さんの場合は、成長途中で癖の修正がしやすいため、早期に始めることで口腔機能の改善が期待できます。
大人にも応用可能で、発音や飲み込みの改善、口元の印象改善にもつながります。
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2 定期的な歯科検診・矯正の相談
受け口や飲み込みのトラブルは、初期段階では自覚しにくいことも多いため、専門医による定期的なチェックがとても大切です。こんな方は定期検診をおすすめします
- お子さまがいつも口を開けている・口呼吸をしている
- 顎が出てきているように感じる
- 発音が聞き取りにくい、滑舌が悪い
特にお子さんの場合は、年に1〜2回は矯正歯科での経過観察を行うことで、成長のタイミングを見極めたより良い時期に治療開始の判断ができます。
3 歯列矯正で噛み合わせを整える
受け口による飲み込みにくさの根本的な原因は「上下の噛み合わせのズレ」にあるため、それを正しく整える矯正治療が効果的です。噛み合わせが改善されると、舌の位置が自然と収まりやすくなり、飲み込みや発音もスムーズになります。
矯正治療の選択肢
矯正治療にもいくつか種類がありますので、選択肢をご紹介します。
表側矯正
表側矯正は、歯の表面にブラケットとワイヤーを用いて歯並びを整える方法です。多くの症例があり、大幅に歯を動かす歯並びにも対応していることが多く、歴史のある方法です。歯の表面に装置をつけるため、装置の見た目が気になることがありましたが、白や透明のブラケットを選択できるようになり、審美的を分かりにくくすることも可能です。
裏側矯正(舌側矯正)
歯の裏側にブラケットとワイヤーの装置をつけるため、周囲の方からほとんど装置が見えにくい方法です。矯正中の装置の見た目が気になる方におすすめの方法になります。
マウスピース型矯正
透明の薄いマウスピースを使用して、段階的に交換することで歯を動かす方法です。患者様が取り外しをできるため、食事や歯磨きの時は矯正前と同様に過ごすことができます。ただし、自己管理が必要な方法で、1日20~22時間の装着が必要ですが、装着時間が短くなってしまうと治療計画通りに歯が動かないため、きちんと装着時間を守る必要があります。
【まとめ】
つばを飲み込みにくい、発音しにくい、といった症状がある方は、「受け口」に原因があるかもしれません。受け口は見た目だけでなく、機能的にも問題がある状態です。日常の小さな違和感も放置せず、一度専門の歯科医院で相談してみることで、将来的なトラブルを防ぐことができます。札幌キュア矯正歯科では、矯正治療を幅広く行っていますので、お気軽にご相談ください。カウンセリング予約はこちらから。